1 油断できない結核
結核の予防のために,結核菌で自然感染する前にBCGワクチンを接種します。特に,抵抗力の弱い乳幼児がかかりやすく,予後がよくない結核性髄膜炎や粟粒結核などの重い結核に対しては,BCGはきわめて有効です。結核に対する抵抗力は母体からもらうことができないので,生後間もない赤ちゃんでも,結核にかかる心配があります。BCGをできるだけ早い時期(2ヶ月頃から)に接種しておきたいものです。
2 BCGワクチンについて
 BCGワクチンは,パスツール研究所(フランス)のカルメットとゲランによって開発されたものです。結核予防法に基づいて,全国的に予防接種が実施されております。
 接種方法は,1968年からは軽い局所反応ですみ皮内法と同等の接種効果がある経皮接種(管針法)になりました。
平成17年からツ反をしないでBCGを接種することになりました。以下の内容はツ反の項目もかなりありますが、参考になることもあり、このまま残しておきます。
ツ反をしないで、BCGをするというのはあまりおすすめできないのですが、国の方針になりました。本当の結核を見逃すことになりはしないか、また、非常にまれですが免疫不全症があり、この患者さんの場合にはBCGをすることは命取りになります。
接種時点で結核感染を受けている子は、接種後、2〜3日で局所に強い反応が見られることがあります。これをコッホ現象といいます。この局所反応はすぐに治りますが、結核感染のための検査や治療が必要になってきます。
BCGワクチンを接種すると必ず針痕がつきます。この時にまれに問題になるのが、コッホ現象です。コッホ現象は結核に感染しているお子さんにBCGワクチンを打つことで局所反応が早く強く出る現象のことです。
しかし「早く強く出る」というのは「早く」「強く」接種部位が赤くなります。通常は、BCGワクチンを接種して約10日後から少しずつ赤くなり、約1〜2ヵ月後に接種した針痕部の周囲と針の間が赤くなります。その赤くなり方には個人差があります。
しかし、コッホ現象では、BCGワクチンを接種した1、2日後(遅くても7日以内)に、針痕部が白く抜けてぷつっと腫れ、その周りが全体的に赤くなり強い反応に見えます。
そのため、接種した1、2日後に接種した針痕の周りだけ少し赤くなったとしても、上記のような強い反応ではなければコッホ現象である可能性は低いです。また、接種して1か月経ってから接種部位が赤くなる場合はコッホ現象の可能性は低いです。
「早い」段階で「強い」接種部位が赤くなる反応が出たら、結核の感染を示すコッホ現象の可能性があります。1週間以内に接種部位に強い赤みがあるようなら病院を受診しましょう 3 ワクチン接種の実際
1)接種の時期
生後2ヶ月になったら受けるのが最適ですが、先の免疫不全の可能性もあるので、三混など受けてからする方法をおすすめしています。1歳までは無料で受けられますが、できたら予防という観点から6ヶ月になる前に受けておいてください。
2)接種の方法
9本の針が植え付けられている「管針」を用いて経皮接種します。管針で強く2回(2カ所)押して,接種します。
平成17年4月1日からツ反を行わないで接種することになりました。
結核を疑ってツ反を検査することはあります。
ツベルクリン反応検査は次に掲げる人に対して行いません。
@明らかな発熱を呈している者,A重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者,Bまん延性の皮膚病にかかっている者,Cツベルクリン反応検査においてツベルクリン反応が水ほう,壊死等の強い反応を示したことのある者。D副腎皮質ホルモン剤を使用している者。また,麻しんや風しんなどにかかった後や,麻しんワクチン接種後1カ月間は,ツベルクリン反応が減弱または陰性化することがあるので注意を要します。
BCG接種は,上記@,Aのほか,B結核その他の疾病の予防接種,外傷等によるケロイドの認められる者、Cその他,医師が予防接種を行うことが不適当と認めた者に対しては行いません。また,免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者,エイズ感染者にも,BCGを接種しません。
4)接種部位の変化
 接種後1ヶ月以内に針痕に相当し発赤,硬結,次いで腹痛,痂皮を生じますが,いずれも通常の局所の経過であって,2〜3ヶ月で小さな瘢痕になります。まれに腋窩リンパ節に軽度の腫脹を起こすこともありますが,通常は2〜3ヶ月で自然に消退します。
Q  BCGワクチンの有効性について教えて下さい 
A 1年後にツベルクリン反応をみますと,80%以上の陽性率が得られます。
 また,接種効果の持続期間については,正しい接種がなされた場合,発病予防効果は10年以上続くといわれています。
  戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,23.1991
  森 亨:ワクチン再前線,237,1989
  中島丈夫・吉日直之:日本医事新報、3360,136,1988 
Q   BCGを接種してからどのくらいの期間が過ぎれば、効力が出て来るのでしょうか 
A
   戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,80.1991
Q   BCGの効果は,どのくらいの期間続くのでしょうか。乳幼児期に1回接種しただけで、小学校1年生まで接種の機会がなくても大丈夫でしょうか。 
A  
  戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,80.1991
  森 亨:ワクチン最前線,237.1989
  中島丈夫・吉田直之:日本医事新報,3360,136,1988
Q    BCG接種部位に針痕がみられない場合,接種効果はありますか。また針痕はいくつくらいあればよいでしょうか。 
A
 針痕がない場合は,できれば3カ月後にツベルクリン反応検査をし,結果が陰性ならば再接種することが望ましいです。
  森 亨:ワクチン最前線,246,1989
Q    乳幼児期にBCG接種をしているのに,小学校1年生でツベルクリン反応検査をしますと、約半数が陰性になっているのはどうしてでしょうか。 
A
 BCG接種後のツベルクリン反応陽性の持続期間についてはかなり個人差が大きく,長い場合には10年以上も強陽性が続き,短い場合は2〜3年で陰性になってしまうこともあります。しかし,後者の場合でも,BCGの効果は弱くなっても完全になくなってしまっていないと考えられています。
  戸井田一郎:ツベルクリンの話,80,1991
  徳地溝六:BCG接種−その理論と実際,36,1987
  中島丈夫・青田直之:日本医事新報.3360,136,1988
Q    ツベルクリン反応の「ブースター効果(追加免疫効果)」とはどういうことでしょうか。 
A 
      戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,80.1991
Q    ツベルクリン反応検査をしてはいけない場合はどのようなものでしょうか。 
A
 ただ,正しい結果が得られないおそれがあり検査をする意味が疑問であったり,結果の解釈に慎重を要するというような,「相対的な禁忌」はあります。
現在はツ反をしないでBCGを行っています。
 主なものは、ウイルス性疾患に罹っているときやその治癒直後,ウイルス生ワクチンの接種後1カ月くらいの間、副腎皮質ホルモン剤使用中(軟膏の局所的な塗布を除く)などです。これらの場合は,ツベルクリン反応は正しい値より弱く出たり,陰性になったりします。その他特別な場合として,血液透析中,免疫抑制剤や抗癌剤使用中・照射療法中,サルコイドーシス、リンパ腫,AIDSなどでもツベルクリン反応は弱くしか出ません。
また、何回やってもツベルクリン反応が強く出ることが確実な人には,いまさら検査をする必要はありませんし、過去に水ほう・壊死等の非常に強い反応を示した人に対してはツベルクリン反応検査をしません。
     戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,95,1991
     森 亨:ツベルクリン反応,64,1989
Q BCG接種後の潰瘍ができた場合は、どうすればよいでしょうか。 
A
 一つ一つの膿疱が融合して全体に大きい膿疱になったり,局所を引っ掻いて他の細菌の混合感染を起こしたりした場合は、抗生物質入り軟膏で治療します。
     森 手:ワクチン最前線、245、1989
Q BCG接種後に全身に褐色の斑ができましたが、どうすればよいでしょうか。 
A
皮膚結核様病変:BCGによる結核疹は接種後1ヶ月頃から全身にさまざまな発疹として出現します。接種部位で特に強い反応が見られます。BCG菌が血行性、リンパ行性に全身に周り症状が出ます。多くは経過観察のみで治りますが、結核の化学療法をする場合もあります。
また、接種部位の近くの皮下に腫瘤や化膿巣が発生することがあり、結核菌によって起こる結核性いぼ(真性皮膚結核)となる。これは化学療法が必要です。
Q     BCG接種後、腋窩リンパ節の腫脹がみられます。 A   
 リンパ節の大きさは時とともに変化し,またきわめてまれに瘻孔(組織が欠損して管状の穴ができること)を形成した例がありますので,経過観察は必要です。リンパ節が化膿して波動を触れるか,皮膚との癒着,瘻孔の形成,あるいは3cmを越えるほど大きくなれば,1%リファンピシン軟膏を局所に塗布するか,あるいはイソニアジド(INH)投与などの治療が必要になりますが,原則として外科手術は必要ありません。
  日本結核病学会予防委員会:結核,62,361,1987
  森 亨他:日本医事新報,3288.45.1987
Q    BCGワクチンの接種は何歳までに行えばよいでしょうか   
A
 6ヶ月をすぎると公費負担は受けられませんが,幼児が社会生活に入る前に接種をすませておくという観点から,6ヶ月をすぎた場合でもできるだけ早い時期にBCG接種をしておいた方がよいでしょう。
   森 亨:小児科,37,1141,1996
   横田清司:小児科臨床、49、651、1996
Q    副腎皮質ホルモン剤を使っていますが.BCGワクチンの接種を行ってもよいでしょうか 
A 
 なお,ツベルクリン反応については,反応が弱くなって陽性者が陰性とでることがありますので,これらの薬剤の使用中は行わないでください。
   木村三生夫他:予防接種の手びき 第7版,42,1997
   早川 浩:日本医事新報.3664,142,1994
Q    4歳末満の乳幼児の陽性(29mm以下)例に対する再度のツベルクリン反応検査が行われておりますが,初回検査での陽性者が,再度のツベルクリン反応では陰性になった場合 これを真の陰性者として扱ってよいでしょうか 
A 
 なお,このような偽の陽性が生じる理由として,手技判定の不慣れ(皮下出血斑や針刺激痕の誤読),非特異性反応の一過性の出現などが考えられますが,まだ確かなことはわかっていません。
   森  亨:ツベルクリン反応検査,87.1995
   戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,59、1991
Q  4歳末満の再度のツベルクリン反応は−初回のツベルクリン反応判読後2カ月以内に行うことが望ましいのはなぜでしょうか。  
A
  戸井田一郎:ツベルクリンのはなし,54,1991
Q  BCG接種歴がなくツベルクリン反応が自然陽転したのですが,どのような生活指導をすればよいでしょうか。 A
INH服用中でも,日常生活や学枚生活はさしつかえないでしょう。ただし,特別の激しい運動や長時間の日光浴、例えば、運動部などの合宿訓練などは避けます。正規の授業で行うプールでの水泳などは許可してもよいでしょう。
  日本結核病学会予防委員会:結核,61,55,1986
 
 










