脳炎・脳症


脳に炎症や脳全体が腫れることにより、頭の中の圧力が高まった結果、いろいろな症状がでてくるものをいいます。生命が危険になることもしばしばある、非常に重篤な疾患です。

原因
脳炎は主としてウイルス感染に引き続いて起こるもの(麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ、突発性発疹(ヒトヘルペスウイルス6と7:HHV-6/7)など)とヘルペス、コクサッキー、エコー、日本脳炎などのウイルスが直接脳に感染し、脳に炎症が起こることによって起こります。
脳症は原因がよくわかっていないものが多いのですが、薬物、金属などの中毒、酸素の欠乏、インフルエンザ(インフルエンザ脳症)などウイルス感染と薬物が相互に作用したものなどが考えられています。
一方症状経過やMRI、CTなどの所見からいくつかの病型に分類されています。急性壊死性脳症、出血性ショック脳症症候群、二相性けいれんと遅発性拡散能低下を呈する急性脳症(acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion:AESD、けいれん重責型急性脳症)、Reye症候群などがあります。分類不能の場合もみられます。

症状
発熱、けいれん、意識障害が最も多い症状です。嘔吐、頭痛、その他の神経症状、異常行動や異常言動として意味不明のことをしゃべったり、妙に怖がったり、突然走り出したりすることなどがあります。また、自発呼吸が困難になったり、心臓の機能が低下し血圧が下がってきたり、腎臓の機能が低下し水分や老廃物を排出できず体に蓄積していったり、血液を固まらせる凝固系が異常(播種性血管内凝固症候群 disseminated intravascular coagulation:DIC)になったりと多くの臓器に障害を来すことがあります。最も重篤な場合は生命の維持が困難になることもあります。

診断
脳脊髄液の検査、CTスキャン、MRI、脳波などを検査し、診断します。脳波では一般的に瀰漫性の高振幅徐波が多く見られます。
脳炎は脊髄液に炎症細胞が増え、蛋白が上昇することが多く、また、免疫グロブリンIgGの上昇が見られることが多いです。脳症は脊髄液に炎症細胞は見られません。

治療
入院して、安静にし、輸液を行ない、脳内の圧力を下げる治療を行います。それ以外にウイルスに直接効果のある薬や脳の機能を良くするような薬を使用します。

予後
ウイルスの種類や治療効果、免疫力など多くの因子が予後を決定します。いったん脳炎を起こした場合には生命が失われることも珍しくありません。 意識障害が続いたり、けいれんが止まらなかったりといった脳症状が続く場合には、命が助かっても精神や知能、運動機能が障害されてしまうことがかなりあります。また、二次性のてんかんなども後遺症として残ることがあります。

予防について
日本脳炎はもちろん、麻疹などウイルス感染は脳炎を起こすことがあります。これらワクチンで予防できる疾患についてはできるだけワクチンをしておいてください。麻疹、風疹、おたふく、水ぼうそう、日本脳炎など。
インフルエンザも脳炎・脳症を起こすことがあるので、これもワクチンが必要でしょう。
ライ脳症の予防の予防のために水ぼうそう、インフルエンザのときにアスピリンを使用しないことやインフルエンザ脳症を予防するためにインフルエンザのとき非ステロイド系の解熱鎮痛剤(ポンタール、ボルタレン)を使用しないようにしなければなりません。
ヘルペス脳炎も早期の治療が必要で、重症ではありますがお薬で治療可能な病気です。
高熱があり、うとうとして呼びかけてもなかなか返事しないとか、起こしてもすぐに眠り込んでしまうといった意識障害が見られる場合、けいれんが止まらない場合には至急病院を受診してください。
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