アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)



小児のアレルギー性鼻炎はハウスダストやカビ、その他花粉や様々なものに対して、鼻粘膜がアレルギー反応を起こして、いろいろな症状を引き起こすものです。
乳幼児にもありますが、学童期から多くなり、頻度は20〜30%といわれています。近年低年齢化していると指摘されています。

アレルゲン(アレルギーを起こす物質)
ハウスダスト、カビ(クラドスポリナム(クロカビ)、アルテルナリア(ススカビ)、ペニシリウム(アオカビ),アスペルギルス(コウジカビ))、花粉、食物、その他環境因子の順です。小児では花粉はあまり多くなかったのですが、かなり増えてきました。
また、最近では犬や猫、蛾(メイガ、イガなどの成虫の鱗粉、幼虫のフン)、ゴキブリ(死骸やフン)などが注目されています。
さらに環境因子として黄砂、PM2.5などが近年問題になっています。黄砂は色々な付着物(細菌、カビ、微生物の死骸、大気汚染物質(排気ガス、二酸化炭素など))を含んでおりこれらがアレルギーの原因になる可能性があります。
一年中症状があるものは通年性といい、ハウスダストやカビによって起こり、春や秋などの季節のみに症状が出るものは花粉などによって起こりこれを季節性と呼びます。

症状
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、鼻こすり、目こすりなどがあります。小さい子どもでは鼻づまりのため頭をどんどん畳などに打ちつけることがあります。
○朝方の強い症状(モーニングアタック)
○特定時期(花粉飛散時期)のみにおきる(花粉症:季節性アレルギー性鼻炎)
○一年中しばしば起きる(通年性アレルギー性鼻炎)
涙やにおいや味がわかりにくいことなど、また微熱。

検査
ラストというアレルギーを起こす物質の血液検査、皮内反応を行い、アレルゲンを調べます。鼻汁中の好酸球の増加などが認められます。

治療
一年中症状がある人はダニやカビが原因のことが多いので、対策としてお掃除をきちんとして、空気の入れ換えなどこまめにして下さい。ダニの数を減らす努力が必要です。
薬物療法では抗アレルギー剤の内服(眠気の無いものが増えてきました)、鼻内噴霧、ステロイドホルモンの鼻内噴霧(鼻噴霧用ステロイド剤)、レーザー照射、手術療法(鼻甲介を切除します)などです。
いずれにしても完全に治ってしまうことはなかなか難しいので、症状をうまくいろいろな治療で緩和して、生活していくことが大切です。
花粉症は春と秋にありますが、この時期はその年の花粉の量などの情報を集めて、外出を考えるなど工夫することでかなり防ぐことができます。いつも悪くなる1〜2ヶ月前から抗アレルギー剤を内服しておくとかなり予防効果が期待できます。

初期療法の薬剤選択
 くしゃみ・鼻漏型
  第二世代ヒスタミン剤
  ケミカルメディエーター遊離抑制剤  ケミカルメディエーターの放出を抑えることでアレルギー反応を抑える薬
                    肥満細胞(マスト細胞)の細胞膜を安定化させて、ヒスタミンなどが外に放出されないようにする
  鼻噴霧用ステロイド薬
 鼻閉型
  抗ロイコトリエン薬
  抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬
  Th2サイトカイン阻害剤または鼻噴霧用ステロイド薬

注意すること
小児ではかぜを合併していることが多いので、かぜの治療もきちんとしておきましょう。
気管支喘息の合併も多く、同時に治療することが大切です。小児気管支喘息はアレルギー鼻炎を60〜80%合併しているといわれています。鼻炎を良くしていくことで喘息も改善していく可能性が指摘されています。

アレルゲンについて

花粉
スギ花粉症

イネ科の植物
 イネ科の植物(カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリ、ギョウギシバ)
 スギ花粉症と診断される方の52%がカモガヤ花粉にも感作され、スギ花粉以外に原因があった場合には約20%、そのうち14%はカモガヤ花粉に単独感作されていたという報告があります。カモガヤなどのイネ科の花粉は晩春から秋にかけて飛散し、6月と8月前後にピークが見られます。また、イネ科間には強い共通抗原性があり症状が長期化する可能性があります。  イネ科花粉は飛散距離が短いため、近づかないなどの対策を立てましょう

ペット
犬、猫は飼っていなくても感作が成立します。野良猫、祖父母の家などにも注意が必要です。
ペットのアレルゲンは飼育している家庭だけではなく、公共の場などから衣類に付着し人を介して持ち込まれます。ネコアレルゲンはダニアレルゲンよりも小さいため軽く、空中での滞留期間が長く壁などにも付着します。そのため短時間のうちに症状が誘発されます。ネコを飼育していない家でもネコアレルゲン感作を起こす量が検出されます。つまり入り込んできていることを示しています。

屋内に発生するメイガ、衣蛾(いが)
蛾は乾燥食品、穀物、菓子などを発生源とするメイガ、ウールなどの動物繊維の衣類などに発生する衣蛾(イガ)などに発生する蛾がいます。メイガ(ノシメマダラメイガ)は穀物、乾燥果実、お菓子やペットフード等、食品を害する食品害虫とされています。全国の調査家屋の90%で捕獲された報告があります。
イガ(衣蛾)はウールなどの動物性繊維を使用した衣類や布団に発生する衣類害虫です。これら蛾は夜行性のため目にする機会がないことから問診からの聴取が難しい抗原です。
室内で発生するガのアレルゲン量は特に秋に多く見られます。
アレルギーの原因は幼虫のフン、成虫の鱗粉、死骸です。蛾は衣類の虫食いとなる衣蛾の幼虫、証明器具内等にいる成虫の死骸(黒い小さな虫)など身近に見られます。
またゴキブリは1年を通して見られ、アレルギー鼻炎の原因になります。

カビ
室内で見られるカビは湿性、乾燥環境の双方に発生します。カビの胞子は5μm前後で、多くが下気道まで到達するため気管支喘息、過敏性肺炎などの原因になります。胞子が大きいアルテルナリアなどは鼻にも沈着することからアレルギー鼻炎の原因になります。また、アルテルナリア感作は、喘息の重症度にも関連するといわれています。

ダニ
近年、高断熱化の建築によって機密性が高くなりダニが増えやすい環境になっています。アレルゲンとなるダニの死骸やフンの量は10月、11月にピークとなります。これは喘息患者さんの症状発症、増悪する時期と同じ傾向となります。
ダニの生息数は梅雨の時期に増え、真夏に最大となります。一方で死骸、フンは秋に最大となります。また、夏にチリダニが繁殖しにくい環境を作ることが大切な対策となります。

黄砂現象
東アジアの砂漠地帯(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など)や黄土地帯から強風により大気中に舞い上がった黄砂粒子が浮遊しつつ降下する現象を言います。日本における黄砂現象は、春に観測されることが多く、時には空が黄褐色に煙ることがあります。
黄砂現象発生の有無や黄砂の飛来量は、発生地域の強風の程度に加えて,地表面の状態(植生、積雪の有無、土壌の水分量、地表面の土壌粒径など)や上空の風の状態によって大きく左右されます。黄砂粒子はいったん大気中に舞い上がると,比較的大きな粒子(径が10マイクロメートル以上)は重力によって速やかに落下しますが、小さな粒子は(径が数マイクロメートル以下、PM2.5など)は上空の風によって遠くまで運ばれます。たとえば、東アジアが期限の黄砂粒子が太平洋を横断し、北米やグリーンランドへ輸送されたことも報告されています。
PM2.5はさらに小さいので遠くに飛び、気管支の奥に入り込むことが予想され、重大な問題になってきています。
近年、アレルギー鼻炎やアレルギー結膜炎がとてもひどくなっています。この空気の汚れが明らかに影響しています。

※黄砂は中国の砂漠化でどんどん増えています。この砂漠化は猛烈な勢いで増加しており、北京の近郊まで迫っているといわれています。元々はモンゴル地方での農業化政策がさらにこれを進めているといわれています。草原を農業生産するために表面を農耕することであっという間に砂漠化していくということです。元々のモンゴルの遊牧民は草原を維持するために農耕化をしないという考え方があったのです。ここでも中国の施策の問題があり、そのためにこれだけの大きな問題となっているのです。
日本は西に中国があるというだけでこれだけ迷惑を被っています。
また、日本が砂漠化を防ぐために植林事業をしています。年間90億円も供給して事業を行っていますが、全くうまくいっていません。植林をしても大きくなると次々に抜かれて薪にされるのです。また、特殊な補水製剤を取られてしまっています。
この費用は捨てているようなものです。
★黄砂の成分:化学組成的には炭酸カルシウム(CaCO3)が10%以上です。この炭酸カルシウムはアルカリ性で,酸性雨の中和効果があるとも言われている。鉱石として、石英、長石、雲母、カオリナイト、緑泥石などの粘土鉱物を含んでいる。

※鼻噴霧用ステロイド剤:「小児アレルギー疾患総合ガイドライン2011」では中等症以上に推奨されています。
   鼻症状の抑制やいびきの減少、朝起きることができる、日中の眠気が消失した、運動や勉強に励むことができるなどQOLが改善して来ることが認められています。
    ナゾネックス、フルナーゼPなど小児使用できるものが出ています。
ナゾネックス(モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物点鼻薬) 1日1回投与 12歳未満各鼻孔に1回噴霧 12歳以上 1回2噴霧

☆舌下免疫療法について (鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2016年度版より)
 舌下免疫療法はスギ花粉症,ダニ通年性アレルギー性鼻炎においていくつかの試験でプラセボを用いた試験が行われ,有用性を示している.2014 年からはスギ花粉症に,2015 年からはダニ通年性アレルギー性鼻炎に保険適用となっている。
 PG-MARJ2016では,アレルゲン免疫療法の項目に大きく紙面を割いて,方法論,試行手順,主な舌下免疫療法薬剤について記載した。現在,スギ花粉症では約40,000人に使用されている舌下免疫療法であるので,発売早期であってもPG-MARJ2016 では安全に確実に施行できるよう配慮したものである。
 舌下免疫療法には現在,スギ花粉症だけでなく,ダニ通年性アレルギー性鼻炎においても舌下免疫療法薬が認可発売されている。スギ花粉症における「シダトレンR」,ダニ通年性アレルギー生鼻炎における「アシテアR」「ミティキュアR」である。
 その施行にはインターネット上での講習が義務づけられている。また,実際の実施にあたっては,原因抗原の特定が必要であり,さらに重度の副作用も生じ得ることから,インフォームドコンセントとその副作用対策を行える施設での実施が重要である。
 また,この治療法はWHO(World Health Organization)では3年から5年の継続が望ましいとされている。
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