ミュージカル”キャッツ”


 ミュージカルは見ず嫌い。何となくかったるい感じを抱いていた。踊って歌うなんて言葉がうまく伝わらないよ、などと乗り気でなかった。
特にのら猫が主役で踊って歌うというテーマのミュージカルなんてねエ!という気持ちであった。
しかし結局、妻が以前から「見に行きたい」を呪文のように繰り返すので、つい生返事をしてしまったのだ。

 大阪はどんよりと曇っていた。大阪のMBSという建物は劇団四季の専用劇場だが、「キャッツ」専用と言うべきだった。これには驚いた。すでに19年以上のロングランである。同じものをこんなに長く、しかも満員にするなんて。再び驚き。
 お隣のホテルにチェックイン。かわいらしい新米のルーム係が「今日は雨の予報でしたのによかったですね。」と言った。曇り空の下に大阪城が見えた。雲が重そうだったが、ここは大阪という大都市のほんのわずかの緑の固まりである。ホームレスのテントがそこここにみられ、少し悲しかった。しばらくすると彼女の予想が当たり雨が降ってきた。
 ホテルを出ると、並木の生い茂った道をたくさんの人々が流れていた。このあたりはあまり大阪らしからぬ洗練された雰囲気がある。
ほとんどが若い女性達である。MBS劇場に向かっているのだ。
 開演30分前にインターネットで予約したチケットを受け取り、中に入った。大勢の人たちが廊下の椅子で軽い食事をとっていた。慣れたものである。
 席は2階だった。これは一目で失敗したと思った。インターネットでのS席は残り少なく、舞台に近い2階の方がいいと思ったのだ。しかし、ステージはあきらかに1階に向けて作られ、感覚的に近い。ステージが始まってさらにこのことが明らかに。

 真っ暗な中に猫の目が光る、始まりだ。
 最初のうち、なにをどうしているのかよくわからなかった。第一あらすじがさっぱり。しかし、踊りも歌もテンポよく、スムーズに流れて、次第にどんどん乗せられていった。
 妻は手拍子、手拍子楽しそう。圧倒的に女性客が多いのだが、たまたま僕たちの周りには男性が多くて、僕を含む男どもは静観。

 僕は途中からあらすじなどは考えるのは無用のことだと気づき、ステージのセットやすばらしい歌や踊りを楽しむことにした。
残念ながら、2階席では臨場感が伝わってこない。猫たちがステージの前に二つある、滑り台のようなところから、滑って降りてくるのである。これはほんとに悔しかった。1階をとろうと思えば取れたのに。残念。
 結局なんだかよくわからないまま、あの猫ちゃんはセクシーだとか、こちらの猫ちゃんは美人で歌がすごくうまいとか、セットは本当によくできているなとか、中国出身の男性がすばらしいダンスをしたとか、楽しい思いをして、あっという間に時間が過ぎた。列車の歌の時にはばんばん手をたたいていた。
 最後に「猫は気高く生きている」というせりふにふんふんなるほどと思いながら、幕は下りた。とても元気をもらったようだ。
 ロンドンキャッツ公演は20回目の誕生日を過ぎた後、幕を閉じてしまったことだし、日本の公演も今年の9月に終わる予定である。今度は絶対にかぶりつきで、見ようと考えているこの頃である。
(2002.6.23)

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