疥癬(カイセン) Scabies 


 ヒトカイセン虫(学名:Sarcoptes scabiei var hominis ヒダンダニ)の角層内寄生が原因で生じる掻痒性皮膚疾患です。
 ヒト肌同士の接触で感染します。近年では性感染症(STD)による感染様式よりも”老人施設病”とまで呼称させるように、”介護者の手”を介する感染伝播が優勢です。
 小児においても、高齢者の介護に当たった母親が祖母などによる抱っこを介した感染が目立ちます。
 誤診されやすい傾向があります。 

症状
他のダニ刺症と同様に体幹・四肢に丘疹撒布(さんぷ)するが、雌成虫が好んで寄生・産卵する手、外陰に小水疱や膿疱、線状疹(疥癬トンネル)、結節などが観察されることが特徴です。
新生児、乳児の疥癬の特徴
 1)結節性疥癬と言われるように、体幹、四肢にも中・大型の結節を形成し、まるで肥満細胞腫の様相を呈することがあります。
 2)介護者の手が頻回に接する後頭部から頸部(特に顔面)および足底などにも皮疹が及ぶことがあります。

鑑別診断
 種々の虫刺症、アトピー性皮膚炎(特に掻痒型)、肥満細胞症、若年性黄色肉芽腫、ランゲハンス細胞組織球症、手足口病、小児肢端膿疱症などがあげられます。

治療
10%クロタミトン軟膏(オイラックス軟膏)が有効でありますが、広範囲長期連用による毒性の問題から5歳以下の幼少児には硫黄軟膏を使用します。
いずれも1日1回入浴後、後頭部以下全身に塗布します。罹患した家族全員の同時治療も実施します。
硫黄軟膏は保険収載されている製品(イオウ・サリチル酸・シアントール軟膏)や市販品(アスター軟膏)がありますが、5%程度の濃度の硫黄含有ワセリン軟膏を院内調整するのも良い方法です。

(文献 70 p48)

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