心筋炎 myocarditis


心筋炎とは
 心筋炎は感染などによる心筋の炎症により心臓のポンプ機能の低下をきたし、低心拍出状態とうっ血性心不全を呈する疾患です。無症状の例が少なくないことや原因不明の突然死と診断されてしまう例もあり、成人、小児ともに発症率や死亡率は不明です。
剖検例の検討から、心筋炎は若年者における突然死の20%を占める重要な原因であることを示唆しています。さらに乳幼児突然死症候群においても16%の例で心筋への炎症細胞浸潤が認められており、心筋炎は小児期の突然死の重要な原因になっていると考えられます。

原因
多くはウイルスや細菌などの感染によって発症します。心筋親和性の強いものとしてピコルナウイルスがあり、特にコクサッキーB群ウイルスがもっとも高頻度とされています。そのほか、エコーやコクサッキーA群、インフルエンザB型、単純ヘルペスやサイトメガロなどのヘルペス族も心筋炎の主要な原因とされてますが、心筋ウイルスゲノム解析法にてアデノウイルスやパルポウイルスB19も高率に検出されたとの報告があります。これら感染症以外にも薬物、放射線、熱などの物理刺激、あるいは代謝障害や免疫異常も原因となり得るのです。

症状
新生児から学童期まで全年齢層で発生しますが、多くは発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などの感冒様症状や、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状が先行します。この時点では心筋炎の診断は容易ではありません。その後、数時間から数日の経過で心症状が出現してきます。心症状には@心不全徴候 A心膜刺激による胸痛・背部痛 B心ブロックや不整脈に随伴する症状があります。
脈の異常(頻脈、除脈、不整脈)、低血圧、心音減弱、奔馬調律、湿性ラ音、頸静脈怒張などがしばしば認められる所見です。

検査
CRP上昇、AST、LDH、CK-MBなどの心筋逸脱酵素の上昇を認めます。中でも全血を用いた心筋トロボニンT迅速測定が簡便で有用です。
胸部X線写真では、時に心拡大や肺鬱血像を認めます。
心電図は初回変化が軽微でも経過とともに異常所見が明確になるため、繰り返し行うことが重要です。致死的不整脈が出現することがあるので、入院後は心電図モニターが必須です。心エコー検査では心のう液貯留に加えて、一過性の壁非行と壁運動低下、心腔の狭小化を認めます。

治療
心筋炎は炎症期が1〜2週間持続した後に回復期に入ります。多くは炎症に伴う可逆的な心筋機能低下であり、急性期にまったく収縮しなかった左室壁が回復期にはほぼ正常化することもまれではないのです。心筋炎に対する介入の第一は、自然軽快までの血行動態維持です。
心不全に対して、カテコラミン、ホスホジエステラーゼV阻害薬、hANPなど用いて急性期を乗り切ります。ジギタリスは強心効果よりも催不整脈作用が強いので仕様を避けます。
房室ブロック、心室頻拍、心室細動などの不整脈を合併したらそれぞれ体外式ペースメーカーや直流除細動にて対応します。
ステロイドパルス療法の試みや大量免疫グロブリン療法の有効性も注目されています。

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