蚊刺過敏症(ぶんしかびんしょう)


蚊刺過敏症とは、別名蚊アレルギーとも呼ばれる病気です。 非常に稀な病気であり、その名の通り蚊やブユなどに刺されることでアレルギー反応を示します。 通常、蚊のアレルギー反応は誰しも起こります。蚊に刺された際に、蚊から出される唾液腺物質に反応しているのです。この唾液腺物質とは、刺したときに人に痛みを感じさせないための麻酔作用などを持っており、様々な成分が含まれています。 ほとんどの人は、この唾液腺物質にアレルギー反応を示し、その結果としてかゆみや腫れを生じるのです。しかし、ごく稀に蚊に刺されるとひどい腫れ・発熱・リンパの腫れなどの激しい症状を示すケースがあります。これが蚊刺過敏症です。 発症するケースは少ないですが、体温が高くて蚊に狙われやすい幼小児期に比較的多くみられることがわかっています。

症状
蚊刺過敏症の具体的な症状は、蚊に刺された箇所だけでなく全身に現れることがあります。
主な症状としては、刺された箇所のひどい腫れ 発熱 リンパの腫れ です。多くは小児に発症します。
一般的な蚊に刺された場合であれば、刺された箇所の腫れ・かゆみなどが現れる程度です。ひどい場合には、水ぶくれなどができることもありますが、全身症状として現れることはありません。 小児では蚊に刺されると水疱を伴う強い炎症反応を生じる例が少なくないので、蚊刺過敏症との鑑別が必要です。しかし、通常の蚊刺症では水疱を形成しても潰瘍化までは至らないので瘢痕を形成することはありません。 しかし、この病気の場合は蚊に刺された箇所がひどく腫れたり水ぶくれになったりといった症状がみられます。そして、発熱を伴ったりリンパが腫れたりして、全身症状になるケースもあるのです。 また、刺された箇所は血ぶくれからかさぶたとなり、瘢痕(はんこん)になることもあります。潰瘍を生じた後に瘢痕を形成するので、四肢を中心に多数の萎縮製瘢痕を認めることが多くなります。 このように、一般的な蚊に刺された症状とは大きく異なるため、ある程度見た目でも蚊刺過敏症であるかどうかが分かるでしょう。
蚊刺過敏症の患者は基礎にEBウイルス関連NK細胞増殖症を有しておりますので、経過中にNK細胞リンパ腫を発症して死に至ることもあります。

原因
蚊刺過敏症を発症する原因は、明確には判明していませんが、EBウイルスの感染が関与しているといわれています。 EBウイルスとは、エプスタイン・バール・ウイルスのことです。このウイルスは、通常B細胞に感染します。また、がん細胞などを攻撃するリンパ球の一種であるNK細胞に感染すると、異常な増殖が発生するのです。 通常は自然に排除されますが、ごく稀に慢性活動性EBウイルス感染症となることがあります。そして、蚊に刺された刺激により皮膚に浸潤し、先述したような全身症状などを引き起こすと考えられています。

検査
主な検査方法としては、慢性活動性EBウイルス感染症かどうかを調べることも含めて、次のようなものが挙げられます。 血液検査 抗体検査 EBウイルス感染症迅速診断(リアルタイムPCR法) 蛍光抗体法 マグネットビーズ法 血液検査では、EBウイルスに対する抗体を測定します。しかし、血液検査だけでは慢性活動性EBウイルス感染症かどうかが明確にはわかりません。そのため、抗体検査などを行います。 抗体検査とは、EBウイルスに感染しているかどうかを検査する方法です。抗体が異常に高い数値となると、感染が疑われます。またEBウイルス感染症迅速診断は、血液中のEBウイルスの量を検査して増加量を調べる方法です。 しかし、抗体検査やEBウイルス感染症迅速診断のみでは、感染症にかかっているかは確定できません。そのため、感染症にかかっているかを明確にするために、EBウイルスがどの細胞に感染しているかを検査します。その方法が蛍光抗体法やマグネットビーズ法です。 これらの検査を経て、慢性活動性EBウイルス感染症だとわかれば、蚊刺過敏症の可能性が考えられます。

治療
蚊刺過敏症の治療方法としては、確立された治療方法はありませんが、発熱やリンパ節の腫れを抑えるために、ステロイド内服薬・免疫抑制剤などを使用して治療を進めることがあります。 しかし、これらは一時的に症状を抑える対症療法であり、慢性活動性EBウイルス感染症の根治に至るわけではありません。根治のためには、化学療法や造血幹細胞移植を検討する必要があります。

予防
蚊刺過敏症は、非常に稀な病気です。大人ではほとんど発症せず、幼小児期に発症するケースが多いといわれています。発症例も少ないため、原因や治療方法などは明確に確立されていません。 しかし、発症にはEBウイルスなどが関与していると考えられており、重症化すると悪性リンパ腫を発症する可能性があります。そのため、決して軽視して良い病気ではありません。 実際に大人になってからの発症例もあるため、大人だからといって安心もできません。 明確なチェック方法や対処法なども確立されてはいませんが、蚊に刺された際の症状は蚊刺過敏症を見分ける大きな材料となります。そのため、蚊に刺された際の症状に少しでも違和感を感じた場合には、すぐに専門の医療機関で受診しましょう。 また、可能な限り蚊に刺されないようにすることが発症を防ぐことにつながるので、注意して対処しましょう。 家族ぐるみで集団駆虫をします。家族みんなで薬を内服します。幼稚園、保育園単位でも集団駆虫が必要なこともあります。
生活での注意は下着の取り替え、洗濯を頻回にしましょう。また、入浴、寝具の日光消毒、そして床の清掃を徹底的におこないましょう。
爪などきちんと切っておきます。

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