川崎病


 乳幼児に多くみられる原因不明の急性の熱性疾患です。日本に多い病気です。熱が長く続き、ほとんどの子どもたちはよくなりますが、心臓の筋肉に栄養を運ぶ冠動脈という大切な血管に炎症をおこす合併症があります。病気の本態は全身の動脈におこる血管炎と考えられています。
 川崎病の最も重要な点は心臓に合併症が起こることです。本症にかかった子どもの10〜15%に冠動脈に障害を残すことがわかってきました。これが原因で急性期に突然死をおこしたり,のちに冠動脈が狭くなって心筋硬塞をおこすことが知られており,長期間の経過観察と管理が必要な疾病と考えられています。

原因
わかっていません。

症状
 4歳以下の乳幼児の比率が高く、1歳にピークがあります。
 発熱し、頸のリンパ節が腫れてきます。高熱がなかなか下がらず、その間に両眼球結膜(目の白いところ)の充血やくちびるが赤くなり、乾燥してひび割れ、出血することもあります。舌は赤くなりいちご舌という表現がされます。体には不定型の赤い発疹,手のひらが赤くなる、また、手や足の甲がしもやけ様になるなど,本症特有の症状がつぎつぎとあらわれてきます。
ほぼ1週間で急性期の症状が出そろいます。このころ,すでに冠動脈に変化がおこっている可能性が大きく,心エコー検査が必要になります。高熱は1〜2週間続きますが、急性期を過ぎたころ、手足の指先から膜のように皮が薄くむけてきます。落屑(らくせつ)といいます。
 病初期に、しんどそうに青白い顔をしている割には眼とくちびるが異様に赤いことから、川崎病顔貌などとよばれています。

治療
本症は致命的な心合併症をおこすことがありますので、疑いがあったり、診断がつきしだいすぐに入院して治療、管理します。
川崎病を治癒させる治療法はありません。急性期には血液を固まらせない目的でアスピリンという抗凝固薬が使用されます。冠動脈瘤の発生予防の目的で、急性期にγ(ガンマ)グロブリンという免疫製剤の大量療法が行われています。
ガンマグロブリンの大量療法により、死亡率はずいぶん下がってきました。
心臓の合併症については、冠動脈瘤(血管が膨らんでこぶができる)を残した子どもについては定期的に心エコー・負荷心電図の検査を受ける必要があります。また、必要に応じて冠動脈の造影検査を行うなど、心筋梗塞など虚血性心疾患を事前に予防することがたいせつです。

参考までに以下に診断の手引きをご紹介します。
川崎病(MCLS;小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)診断の手引き(改訂4版)
本症は,主として4歳以下の乳幼児に好発する原因不明の疾患で,その症候は以下の主要症状と参考条項とに分けられる。
A.主要症状
1.5日以上続く発熱
2.四肢末端の変化:(急性期)手足の硬性浮腫,掌蹠ないしは指趾先端の紅斑
            (回復期)指先からの膜様落屑
3.不定形発疹
4.両側眼球結膜の充血
5.口唇・口腔所見:口唇の紅潮,いちこ舌,口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
6.急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹
6つの主要症状のうち5つ以上の症状を伴うものを本症とする。
ただし,上記6主要症状のうち,4つの症状しかみとめられなくても,経過中に断層心エコー法もしくは,心血管造影法で冠動脈瘤(いわゆる拡大を含む)が確認され,他の疾患が除外されれば本症とする。
B.参考条項
以下の症候および所見は,本症の臨床上,留意すべきものである。
1.心血管:聴診所見(心雑音・奔馬調律・微弱心音),心電図の変化(PR・QTの延長,異常Q波,低電位差,ST-Tの変化,不整脈),胸部X線所見(心陰影拡大),断層心エコー図所見(心膜液貯留・冠動脈瘤),狭心症状,末梢動脈瘤(腋窩など)
2.消化器:下痢・嘔吐・腹痛・胆嚢腫大・麻痺性イレウス,軽度の黄疸,血清トランスアミナーゼ値上昇
3.血液:核左方移動を伴う白血球増多,血小板増多,赤沈値の促進,CRP陽性,低アルブミン血症,α2グロブリンの増加,軽度の貧血
4.尿:タンパク尿,沈渣の白血球増多
5.皮膚:BCG接種部位の発赤・痂皮形成,小膿疱,爪の横溝
6.呼吸器:咳嗽、鼻汁,肺野の異常陰影
7.関節:疼痛・腫脹
8.神経:髄液の単核球増多,けいれん,意識障害,顔面神経麻痺,四肢麻痺

備考
1.主要症状Aの2は,回復期所見が重要視される。
2.本症の性比は,1.3〜1,5:1で男児に多く,年齢分布は4歳以下が80〜85%を占め,致命率は0.3〜0.5%である。
3.再発例は2〜3%に,同胞例は1〜2%にみられる。
(厚生省川崎病研究班作成,1984年)

生活上の注意
急性期の症状が落ち着いたら、定期的に心臓のチェックをしながら普通の生活ができます。死亡率は非常に下がってきていますので、いたずらに心配しないで、きちんとチェックを受けながら規則正しい生活を心がけましょう。 予防接種も受けることができます。

将来のこと
冠動脈に問題があった場合は、長い期間、経過を観察してゆく必要があります。


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