鉄欠乏性貧血


体の中の鉄分は血(赤血球)をつくるときの大切な材料です。鉄分が少ないと血をたくさん作れなくなって貧血(血がうすい)になります。

◎どうして貧血になるの
 @お母さんからもらう鉄分の蓄えが少ないとき
 A急に体が大きくなるとき
B鉄分の入った食べ物をとっていないとき(離乳食がうまく進んでないとき)
C何かの原因で出血しているとき
※@、A、Bで成長期の赤ちゃんが貧血になります。

◎なぜ貧血だといけないの
  胃の粘膜が縮んできていろいろな栄養素の吸収が悪くなります。鉄の吸収が悪くなりさらに貧血が進行していきます。
  子供の成長、発達、特に最近では乳幼児の知能の発達に大きく影響があるといわれています。だから治しておかないといけないのです。

◎症状は
顔色が悪い、疲れやすい、息切れする、どきどきする、注意力・集中力の低下、持久力の低下、記憶力の低下などがあります。
高度のものが長い間続くと爪の変化(スプーンのようになる)、味覚異常、粘膜萎縮による嚥下障害(萎黄病)などがあります。
高度の貧血があっても、徐々に進行した場合には自覚症状がなく、たまたま検診などで見つかることがあります。

◎検査は
  貧血があるかどうかは血液をとって調べます。赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV(赤血球全体の容積を示す)が低くなります。血清中の鉄、フェリチンが下がり、鉄結合能が高くなります。全体に赤血球の体積が小さく、色素が薄いという表現の小球性低色素性貧血と表現されます。

◎治療
1)食事療法 
  診察の結果他の病気ではない、鉄分をたくさんとれば治る貧血だとわかったら、鉄分を多く含む食べ物を毎日とるようにしましょう。

 【鉄分を多く含む食品】
   レバー、赤身の肉、魚肉(おさしみ)、しらす干し、シジミ、大豆、ほうれん草、 のり、とろろこんぶ、ひじき

 【鉄分の吸収をよくする食品】
   ビタミンCを多く含む果物、野菜

 【鉄分の吸収を悪くする食品】
   お茶(お茶をたくさん飲むのはやめましょう)、
   即席メンやスナック菓子は偏食やムラ食いのもとなのでやめましょう。

2)投薬 
  食べ物だけでは追いつきそうもないときは、3ヶ月ほど鉄剤を飲みます。
  インクレミンシロップ
    1歳未満:シロップとして2〜4mL(溶性ピロリン酸第二鉄として100〜200mg、鉄として12〜24mg)
    1〜5歳:シロップとして3〜10mL(溶性ピロリン酸第二鉄として150〜500mg、鉄として18〜60mg)
    6〜15歳:シロップとして10〜15mL(溶性ピロリン酸第二鉄として500〜750mg、鉄として60〜90mg) 
  フェロ・グラデュメット錠(105mg)
    1日105〜210mgを1〜2回に分けて、空腹時に、又は副作用が強い場合には食事直後に、経口投与する   

  鉄剤(シロップ、顆粒)はどれもあまり味のよいものではありません。いろいろ工夫をして飲ませてください。便が黒っぽくなりますが、気にしないで。
  しばらくしたらもう一度血液検査をして、鉄分の蓄えが十分になったことを確かめてから、鉄剤をやめます。


◆もっと詳しく◆
鉄が欠乏する時期は乳児期から幼児期早期(6〜24ヶ月)と女性の思春期に2つのピークがあります。前者では食物中の鉄が少ないために、後者では月経出血によるものが主原因です。

貧血による精神機能の異常とは別に、鉄欠乏状態はそれ自体が発育期の中枢神経系に大きな影響を及ぼすことが分かってきました。認知力の低下、記憶力の低下などは貧血のためではなく、鉄欠乏そのものによることもあります。思春期はさまざまな不定愁訴が多い時期ですが、精神的に不安定なためではなく、鉄欠乏によることもあります。
鉄はヘモグロビンの構成要素であるばかりでなく、チトクローム、オキシダーゼなどの酵素の構成要素としても重要な元素であり、その欠乏は貧血とその影響による臓器障害のみではなく、それらの酵素の異常によるさまざまな病態をもたらします。
6ヶ月以前では、低出生体重児、周産期の出血などによるもの。24ヶ月から思春期にかけては慢性の出血によるものが多いです。 乳児期には調整粉乳は鉄が添加されていますが、吸収は母乳の方がいいです。しかし、6ヶ月を過ぎると母乳栄養のみでは鉄欠乏性貧血は防ぐことはできないので適切な離乳食を与えます。

食物中の鉄とその吸収率は動物性のものの方が良好です。とくにヘム結合鉄の吸収がよいようです。植物性の食べ物は吸収はあまりよくありません。またフィチンなど吸収を阻害する成分を含んでいます。
鉄剤は硫酸第一鉄の製剤がよいのですが、小児の市販のものは第二鉄製剤のみとなります。
◎貧血は鉄剤内服により改善しますが、幼少期に生じた精神発達への影響などの快復は十分でないといわれています。早く見つけてしっかりと直したいものです。

検査について
赤血球数
ヘモグロビン
ヘマトクリット
MCV:平均赤血球容積 80〜90fl 
MCHC:平均赤血球血色素量 27〜32pg
MCH:平均赤血球色素濃度 32〜36g/dl
網状赤血球数

貧血の基準(WHO)
赤血球数では350万以下はいずれの年齢でも貧血といえる。
ヘモグロビンでは生後6ヶ月〜6歳 Hb 11g/dl以下 Ht 33%以下
           6〜12歳      Hb  12g/dl以下 Ht 36%以下

貧血の分類
1)小球性低色素性貧血 MCV80以下 MCHC 30以上
2)正球性正色素性貧血 MCV 80〜100 MCHC 31〜35
3)大球性          MCV 101 以上 MCHC 31〜35

前の画面に戻る アナフィラクトイド紫斑病へ
禁転載・禁複製  Copyright 1999 Senoh Pediatric Clinic All rights reserved.