自閉症ガイドラインの考察文献より


自閉症ガイドラインで早期診断・治療が強調される
 小児医療の専門家は、小児を診る際に自閉症スペクトル障害の初期の徴候を見逃さないよう医師に助言す る。その規範となる米国小児科学会(AAP)から発表された2つの臨床報告書(ガイドライン)は、自閉症やア スペルガー障害、広汎発達障害など自閉症スペクトル障害の早期診断と治療に関する有用な情報を提供して いる。いずれももAAPが小児科医向けに新たに作成する診療支援情報源、『AUTISM: Carjng for Children With Autism Spectrum Disorders;A Resource Toolkit for Clinicians』に盛り込まれるという(JAMA 2007 ; 298 : 2610)。

小児スクリーニング
 最も重要なのは、18ヵ月齢と24ヵ月齢の時点ですべての小児にスクリーニング検査を実施すること。「これ までAAPは親が子どものことで悩みや不安を抱いている場合に限ってスクリーニングを推奨してきたが、今 回初めて対象をすべての小児に広げた」と共著者でTexas大学保健科学センター小児科臨床教授のChris Plauche Johnsonは述べる。

  米防疫センター(CDC)が最近14州の地域住民を対象に実施した調査によると、小児150人に約1人の割合 で自閉症スペクトル障害が見つかった(Kuehn BM. JAMA 2007 ; 297 :940)。 今回の新しいガイドラインが普及すれば、罹患児の診断率が向上し、より早く治療を開始できるようにな ると期待されるが、そのためには医師がガイドラインを利用する必要がある、とJohnsonは指摘。 「小児科医に余裕のないことは承知しているが、彼らにスクリーニングを実施するよう求めることにした」という。  もう1つの報告書(Identificaton and Evaluation of Children With Autism Spectrum Disorders」に は、言語発達の遅れが明らかになる前に、その軽微な徴候を識別するためのスクリーニング検査とサーベイ ランス方法が記載されている (http://pediatrics.aappublicationse.org/cgi/reprint/peds.2007-2361v1.pdf)。

徴候としては、親が呼びかけても反応がなく振り向かない、同じ言葉を繰り返す、遅れて笑う、視線を合わ せない、といった行動異常があげられる。  また、ガイドラインは、親あるいは介護者が自閉症スペクトル障害に関する不安や悩みを抱いている場合、 標準化されたスクリーニング法を用いて小児の評価を行うよう医師に勧めている。
直ちに診察が必要な徴候としては、
12ヵ月齢を過ぎても発語あるいは指さし行動がない、16が月齢を過ぎても言葉(単語)をまったく 話さない、24ヵ月齢を過ぎても2単語からなるフレーズ(句)をつくれない、といった症状があげられる。  自閉症の徴候に注意を払うのは大切だが、Johnsonは、今回の勧告によって親に過剰な不安を与えるので はないかと懸念する。「親に少々過剰に不安を抱かせると、言葉の遅れやハンドフラッピングが少しあるだけ で、親は子どもが自閉症ではないかと考えてしまう」と彼女は指摘する。

早期発見ツール
 AAPツールキットに関連したビデオは非営利団体のAutism Speaksが作成している。この団体は自閉症へ の一般の認知度向上に取り組んでいる。「ビデオは臨床医や患者の親に自閉症に関連する特徴、言語、アイコ ンタクト(視線)、周囲への無間心などの画像を見せるために作られた。 再生すると2種類の画像が並んで映し出される。1つは正常な小児の行動で、もう一方は自閉症と診断され た小児の行動だ」とAutism Speaks共同創設者のBob Wrightは説明する。
 AAPが発表したもう1つの報告書『Management of childen with Audism spectrum Disorders』は、治療 を効果的なものにするため早期介入が重要であると強調している. (http://pediatrics.aappublications.org/cgi/reprint/peds.2007-2362V1、pdf)。

このガイドラインは、自閉スペクトラム障害の可能性が高いと判断されたら直ちに介入を始めるよう勧めて おり、教師1入あたりの児童数が少ない環境(クラス)で過25時間以上の教育的介入が望ましいという。セラ ピーのセッションには親も参加すべきだとしている。

 かんしゃくを起こす、攻撃的な行動をとる、あるいは自傷などの問題には、行動療法による管理を中心と して適宜薬物療法によるアプローチを行うよう推奨している。さらに、てんかん発作、胃腸障害と睡眠障害 を合併している自閉症スベクトル障害の罹患児治療の指針も示されている。
 現在進行中の自閉症研究によると、治療の開始が早いほど、良好な治療効果が得られるという。「幼少期の脳 は可塑性が最も高い」とAutism Speaks副理事長のAndy Shihは言う。
 今回作成されたガイドラインによって、親は自閉症の子に治療を受けさせやすくなる、と専門家も期待す る。「ガイドラインは州当局にも圧力を与え、自閉症の治療の保険適用を義務づける法案が通過しやすくなる はずだ」とWrightは述べている。
 当局も、ガイドラインが自閉症の診断・治療に良い影響を与えるのかどうかを見守っている。「現在、我々は ガイドラインの実施可能性を検討している」とJohnsonは言う。「その過程で修正すべき点が見つかり、スク リーニング検査などの改善策も立てられると思うが、これはまだ第一歩にすぎない」
January 2008vol.4 No。1 MMJ


前の画面に戻る インフルエンザへ
禁転載・禁複製  Copyright 1999 Senoh Pediatric Clinic All rights reserved.