スギ・ヒノキ以外の花粉症


スギ・ヒノキ以外の花粉症
ハンノキ、シラカンバについて
ハンノキはブナ目カバノキ科の樹木で、シラカンバ、ヤシャブシ、ブナ、コナラなどと同じ仲間です。これらブナ目の花粉間では強い共通抗原性があります。
これらは身近な公園から山地など日本各地に分布し1〜6月に花粉を飛散させます。ハンノキは、スギ・ヒノキと飛散時期が重なるため見過ごされやすいのですが、スギの花粉の飛散時期よりも早くアレルギー症状が出る方はハンノキが原因の可能性があります。
この交差性があるため、知らず知らずのうちに何らかのブナ目花粉に感作されている可能性が高いのです。また、ブナ目花粉間では強い相関が認められるためカバノキ科、ブナ科花粉の感作確認にはハンノキに対する特異的IgE抗体検査である程度予想が可能です。
アレルギー性鼻炎の患者さんではハンノキ感作例の54.8%にOASの既往歴があり、花粉の飛散時期に発症、悪化しやすくなります。また、OASは症状が軽く気づきにくいため、原因物質を繰り返し摂取することで、重篤な症状を引き起こすことがあります。
ハンノキ、シラカンバ特異的IgE抗体が陽性の場合、OASを合併する率は7〜55%と言われています。

イネ科の花粉症(カモガヤ、オオアワガエリ、ハルガヤ、ギョウギシバなど)では約20%、ヨモギ花粉症では40%が合併していると報告されています。原因食物はウリ科のメロンや夏に向けて消費量が増えるスイカ、キウイなどが報告されています。

ハンノキ、シラカンバの花粉が非常に多くなる2〜5月の季節はアレルギー鼻炎、アレルギー結膜炎に加えて眼瞼発赤、眼瞼周囲炎などが多くなり、非常にかゆがったり掻いた結果、結膜に菌が入り込み結膜炎になってしまう児が増えています。
特に眼瞼の下の部分が赤く腫れることが多いようです。なかなか手強くて治りにくい状況が続きます。

※本症を誘発する抗原の多くは感染特異的蛋白質(PR-P) との構造上の類似性が高く、このPR-Pは植物界に広く分布し、種属間での相同性が高いため花粉抗原やラテックス抗原と交差性の高い果物や野菜の発症が多いのです。

(「ALLAZIN」ThermoFisher scientificより)

春は花粉症の話題がメディアでも大きく取り上げられるため、この時期に花粉症の症状を訴える患者さんの多くが、スギやヒノキが原因ではないかと考えて医療機関にいらっしゃいます。
確かに春の花粉症の原因としてスギやヒノキがもっとも多く考えられますが、もう一つの視点として、カバノキ科の花粉が飛散していることにも気を配る必要があります1)
カバノキ科樹木は、北海道や本州の標高の高い山地に生育しているシラカンバだけでなく、身近な雑木林などでもみられるハンノキやオオバヤシャブシなどが挙げられます。
カバノキ科花粉は、花粉間の交差反応性が高く(図)、1〜6月頃に飛散するため、スギやヒノキ花粉と同じ時期に飛散していることもあり、春の花粉症の原因検索にはシラカンバやハンノキといったカバノキ科花粉にも注意が必要です。
また、カバノキ科花粉症の患者さんは、花粉一食物アレルギー症候群(Pollen-Food AIlergy Syndrome;PFAS)と呼ばれる食物アレルギーの可能性も念頭に置く必要があります。
実際に北海道や兵庫県のカバノキ科花粉症患者の20〜40%にリンゴやモモなどバラ科の食物に対するPFAS合併がみられたという報告があり、また、カバノキ科花粉の抗体価が高いほどPFASを呈する頻度が高かったと報告されています2.3)。 ■PFAS(花粉一食物アレルギー症候群)とは
 PFASとは、花粉抗原と果物や野菜の交差反応によって引き起こされる即時型アレルギー症状を指します。生の果物・野菜では症状が誘発されるのに加熱殺菌された市販のジュースやジャムでは症状がないということを多くのPFASの患者さんで経験します。
 誘発症状は、主に□腔内の痒みや違和感といった比較的軽度なものであることから、□腔アレルギー症候群(Oralallergy syndrome;OAS)としても知られています。
 これは、シラカンバ花粉の主要アレルゲンBetvlと同じファミリーに分類されるPR-10やプロフィリンといった、加熱処理などで変性しやすいタンパク質が交差反応の原因と考えられています5)。
 果物や野菜のほかにカバノキ科花粉症の人が豆乳などの大豆加工食品の摂取でアナフィラキシーなどを引き起こす事例も報告されています6)。
大豆特異的IgE抗体検査では、大豆加工食品に対する症状を持つ人が低値ないし陰性になることが多いと指摘されており、大豆特異的IgE抗体検査のみでは花粉との交差成分であるPR-10に関連したアレルギーの診断に十分でないと考えられます。 一方で、大豆加工食品に対する症状をもつ人は、大豆由来のPR-10であるGly m 4に対する特異的IgE抗体検査が陽性となることが多いと報告されています6、7)。
感作花粉によって交差反応を示す果物や野菜との組み合わせは異なります(表)。問診時には、症状が出た食物だけでなく、摂取した際の調理状況や症状が出た時期などを具体的に確認していきます。
PFASによる果物や野菜などのアレルギーの場合、感作源である花粉飛散時期を通して花粉と交差性のある食物の摂取による症状の悪化もみられることがあります4、8)。
これは、花粉の飛散時期に花粉の特異的IgE抗体価が上昇することと関連があると考えられます。
 このように、果物や野菜などによるアレルギー症状は花粉症とも関連があるため、この点を念頭において問診を行い、必要に応じて花粉への感作を確認しながら診療をすることで、適切な診断と的確な生活指導につながります。
  カバノキ科花粉は、花粉問の交差反応性が高く、例えば、ハンノキ特異的IgEとシラカンバ特異的IgEの抗体価には強い相関性があります。
また、カバノキ科と同じブナ目に属するブナ科のブナやコナラも同じようにハンノキ特異的IgEの抗体価と強い相関性があります。


(2019年12月現在) 
    食物アレルギー診療ガイドライン2016より作成
1)鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会編:鼻アレルギー診療ガイドライン
  ー通年性轟炎と花粉症−2016年版
2)山本哲夫他:アレJしギー53(4):435-442,2004
3)吉村史郎:医学のあゆみ209(3):155-159,2004
4)福富友馬他:Pharma Medica 30 (2):83-87,2012
5)川本典生:小児内科48(91:1288-1291,2016
6)白崎英明他:口腔・咽頭科27(1):69-72,2014
7)FukutomiYetal:JAIlergyClinlmmunol 129〔3〕:860-863.e3,2012
8)食物アレJしギー診療ガイドライン2016
     岐阜大学医学部附属病院 アレルギーセンター副センター長 川本典生先生
     

☆岡山県は県北にはシラカンバが多いですが、県南ではハンノキが多く、ハンノキのアレルギーが多いようです。実際には中国地方はシラカンバの花粉アレルギーは多くないようです。
季節は1月の半ばから5月初めの頃まで続きます。抗体も高い方が多いです。


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